乳幼児のゼーゼーについて

咳が出ているお子さんの胸の音を聴診器で聴くと、息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がすることがあります。

「ゼーゼーしているね」と医師に言われたことがあるお子さんも多いと思います。
これは、何らかの原因(感染症だったり、アレルギーだったり、その両方だったりします)で、息の通り道である“気管支”に“炎症”がおこり、むくんで、内腔が狭くなると出る音です。

内腔が狭いと、息がしづらいので苦しくなり、また狭いところには痰が詰まりやすいので、それを吐き出すために、たくさん咳が出ます。

一昔前「ゼーゼー」しているお子さんは、みんな“喘息(ぜんそく)”だと言われていた時代がありました。

喘息なので、発作予防の薬をずっと飲み続けなければいけないと言われていました。
しかし、病気に対する理解が進んで、お子さんが「ゼーゼー」したからといって必ずしもみんなが“喘息”とは言い切れないことがわかってきています。
「ゼーゼー」する乳幼児の中で、アレルギー体質がそれほど関わっていないお子さんと、ダニやホコリのアレルギーが強く関わっているお子さんがいるためです。

◎タイプA:主にウイルス感染による気管支炎のせいで「ゼーゼー」するお子さんです。2~3歳を過ぎると、気管支炎になることが減るので「ゼーゼー」は減ってきます。

◎タイプB:こちらが、いわゆる“喘息”のお子さんです。ダニやホコリに対するアレルギーが強く関わっているタイプで、後々まで(学童期になっても)「ゼーゼー」を繰り返すことがあります。

「ゼーゼー」しているときには気管支が狭くなっているので、気管支を広げる薬を吸入・内服します。炎症自体を改善する効果のあるステロイド薬を吸入・内服することもあります。また、アレルギーの薬であるロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカストやキプレス)を使用することも多いです。

アレルギーの薬なのでタイプBに使用するのはもちろんなのですが、主に感染症が原因であるタイプAでも、気管支の炎症を抑える効果があったり、将来的な喘息の発生率を減らす可能性があることが、最近わかってきています。

これらの薬は全て、以前から“喘息の薬”として使われていたものです。つまり、タイプが違ったとしても、実は、使う薬の種類はあまり変わりません。使い方(期間など)が変わってきます。

タイプBであることが確実なら、数か月~年単位で継続する必要があり、タイプAであれば短期になります。ただし0~1歳では、まだどのタイプなのかがわかりませんので(血液検査などをしても、まだわからないので)、1回の診察だけではなく、こまめに診察をし、慎重に期間を決めていくことが重要です。


最近問題になっているのが、“赤ちゃんなので喘息ではない”と決めつけてしまう医師が少なからずいることです。「病院によって説明内容が全然違う」と思われたことがある方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

全員がタイプBというわけではない”という認識が行き過ぎてしまい、“全員がタイプA”という指導がされていることがありますが、これは極端で、実は誤りです。

ゼーゼー」しているお子さん全員を“喘息”と決めつけず、一方“赤ちゃんなので喘息ではない”と決めつけて“喘息の薬”の使用を躊躇することもなく、それぞれのお子さんに合った治療が必要になります。



ご質問などがありましたら、ぜひご相談下さい。